クローン病の確定診断が出てから25年で初手術をし、オストメイトになった夫のご飯や、日々の暮らしで注意している事をまとめておきます。ご病気になられて不安な方や迷っている方の参考になれば幸いです。
クローン病とのつきあいかた
クローン病は、炎症性腸疾患(IBD)のひとつで、消化管が炎症を起こす病気です。原因も発症のきっかけもよく分かっていないようです。完治する事はないのですが、寛解状態という病気の症状が比較的落ちついた状態を長持ちさせる事で、健康な人と同じような日常生活が過ごせます。

病気については、大学病院や製薬メーカーの解説サイトなどが参考になります。わからない事があれば病院の先生に相談するのが一番だと思います。
悪化して入院・絶食・手術になると色々大変なので、寛解状態をできるだけ長持ちさせるために我が家で日々気をつけている事をまとめます。
患者さんそれぞれで、病態や色々なもの・こととの相性が異なると思うので、クローン病家庭の一例として参考になれば幸いです。
体調記録をつける
クローン病は、長いつきあいになる病気です。学校を卒業したり就職したり、引っ越したりで病院をうつる事もあります。病院が閉院する事もあるので、できる範囲で記録を保存しておく事をおすすめします。
日々の体調の記録
クローン病は患部が体の中なので、どういう状態になっているのかよくわかりません。内視鏡の検査を頻繁にする事はできないので、血液検査の炎症反応などで全身状態を推測する事が多いです。
病気の様子や体調の感じ方、感じた体調と実際の病気の様子の感じ方は個人差が大きいです。自身の体調を把握するために、体調、検査結果など、日々の変化をノートなどに記録しておくと役に立ちます。
また、これを食べたら悪化したとか、これは食べられたとか、こういう事をしたら悪化したとか、そういう記録も大事です。体調が悪くなりはじめた予感、食べたら駄目なもの、無理できる限界などが把握できると、ゆるゆると寛解状態を長持ちさせられるような気がします。簡単でも、記録しておく事をおすすめします。
病院や治療の記録
病院は、通院しなくなった後のカルテの保管は5年程度ですので、気がついたら発病当時の記録が何もない、という事や、治療していた内容が分からないという事態になりがちです。
診断書や、通院・入院時の治療の事、検査結果など、できるだけ紙で記録を残しておく事をおすすめします。パソコンやアプリで記録していた資料は、結構いきなり失われます。20年30年の保存は紙が一番です。
入院時の記録
入院時は、主治医の先生のお名前、毎日の血圧などのバイタルチェックの内容や結果、検査内容と結果、治療内容などを記録しておくと、後々とても役に立ちます。
下記は、夫が入院した時に使っている記録簿的な用紙です。A4サイズのPDFで、ご自由にダウンロードいただけます。このままお使い頂くでも、エクセルなどでお作りになる時の参考にでもなれば幸いです。

ご自由に使って頂ければ嬉しいですが、再配布はしないでください。ご利用にあたっての注意事項も一読いただければ幸いです。
体調管理アプリ
簡単に管理できるアプリもあります。アプリに記録したデータは、定期的に印刷して紙で保管しておくと安心です。

IBDサポートというアプリは、利用している方が多いアプリです。体調やごはん、服薬状況などのデータはCSV形式でダウンロードできます。
クローン病の食事で注意している事
クローン病の食事は低脂質・低残渣・高タンパクと言われています。消化器官に負担がかからないような食事が大事ですが、栄養も必要なので、様子を見ながら柔軟に運用しないと長続きさせるのが大変そうです。
炎症を繰り返すと腸が細くなって食べられるものが減ったりするので、炎症を起こさないように、いけるモノ、だめなモノが判明するまでは、あまり無茶しない方が良いようです。
栄養状態が悪くなると困るので、適宜エレンタールやラコールも利用します。全部置きかえだったり、一部置きかえだったりの量の増減は、検査結果や体調、先生と相談しているようです。
夫は食べるものは自分で決めているので、毎日のメニューは相談して決めています。一般的な一人前は無理でも、少しだけとか、半分だけ食べるとかという事も多いです。残りとか食べられない部位は私がおいしく頂いいています。
おやつも脂質が少ないもの中心。栄養も取れればなお良いです。体調が悪くなりかけた時も食べられるカステラは良く登場します。

低脂質の食事とは
低脂質の食事とは、1日の摂取脂質量を30gに抑える事が推奨されています。赤身のお肉、白身魚、低脂肪の色々など、脂質が少ない食品でメニューを構成します。我が家は、体調良い時は数日間の平均で30g前後になれば良い感じのゆるい運用で、体調が悪い時は、できる限り脂質の量を抑えています。
コンビニやスーパーの総菜、チルド食品、レトルト食品など、栄養成分表示がついているものは脂質量が確認できます。表示がないものの脂質量を推定する参考にもなりますし、摂取した脂質量の管理に役立ちます。ダイエットや脂質制限のある病気にも活用できます。
体を維持するのに必要な脂質もあるので、やみくもに抑えるのではなく、どうせなら摂取する脂質は必要な脂質になるように頑張ります。オメガ必須脂肪酸とかよく覚えられないので、調理油を買う時とかに心がけていれば良いんじゃないかと思います。我が家の油は、オリーブオイルと米油です。
低残渣の食事とは
低脂質にくらべて、低残渣はちょっと分かりにくいですが、うんちの量を減らしたい、という事なので、便秘の人向けの食事の反対と思えば外れはないです。消化しきれずに腸まで送られたものが、狭くなった部分に詰まってしまったりすると大変ですし、消化器官に負担がかからないよう、便の量が少なくなるような食事を心がけます。そして、食事の時はよーく噛んで食べるようしています。
良く噛んで食べる事も大事なんですが、良く噛んでもかみ切れていない事もあるので、危なそうなものは先に避けておく方が安心です。
夫がストーマ生活になってから、消化できずにそのまま出てくるものが視認できるようになりました。固いものがあると、ストーマパウチを傷めるので、消化しきれないものがそのまま出てこないように、より注意しています。
高タンパクの食事
体を作るのに必要なタンパク質は積極的に食べるようにします。胸肉、ささみ、サラダチキン、豆腐などを出来るだけ多く食卓に出すようにしていて、普通の健康なご家庭の食卓とはだいぶ様子が違うアレンジ鍋とか、蒸したり、魚焼きグリルやオーブンで焼いた、さっぱりメニューが多いです。そこそこおいしいとは思うんですが、男性向けっぽくはない感じのメニューになっています。
夫が食べないようにしているもの
以下の品目は、寛解期や体調の良い時でも基本食べないものです。NGアイテムは品目ピンポイントだけでなく、一定の判断基準を持っておくと、可・不可を判断しやすいです。NGそうなお品をどうしても食べたい時は、ほんの少しだけ食べるとかしています。
お肉:脂身、脂身の多い霜降りなどのお肉、鶏皮、ウィンナー・ベーコンなど加工肉全般
お魚:油っこい魚、魚の皮、体調不良時は生のお魚全般、小骨の多いもの、貝類(消化に悪い&食中毒防止)、すじこ・たらこ等魚卵(消化が悪い)、海草類(消化が悪い)
野菜類:摺ってないゴマ、野菜の固い所、柑橘類(薬との相性にもよる)、絹さや・インゲン・長ネギ・ニラ・ゴボウ・蓮根など固めの野菜、果物の皮(マスカット・さくらんぼ・りんご等)、トウモロコシ、タケノコ(繊維問題&炎症しやすい)、きのこ類
主食系:もち米(化膿・炎症しやすくなるから)、玄米
嗜好品:お酒、カフェインを含むもの(コーヒー、緑茶、ほうじ茶、紅茶等)、炭酸類
その他:ラーメンなどの中華麺(かんすいがNG)、香辛料・にんにく・唐辛子等刺激の強いモノ、人工甘味料
体質によって避けている:ほうれん草(シュウ酸を多く含むので腎臓結石が出来やすい)
野菜の固い所の例
体調が良い時は生野菜のサラダも食べていますが、基本加熱しています。歯ごたえが残らない感じに加熱すると安心。繊維の多い固い部分は、加熱後によける時もあれば、加熱前に分ける時もあります。本人の口に入らなければどっちでも良いですし、盛りつけで混入した時は、本人がよけて食べています。この食べない食品群は、ほとんどが夫の自己申告なので、本人の体調との相談が大切なんだと思います。
- 皮(むけるものは極力むく)
- 種(トマト・ピーマン・きゅうり・茄子など)
- もやしの豆・しっぽ
- 薄皮(トマト・ピーマン・豆類など)
- キャベツや白菜の芯付近、小松菜など葉野菜の茎
- ブロッコリーの茎
- アスパラの穂先以外
体調が悪い時に食べてるもの
夫は、クローン病の症状が悪くなり始めた気がしたら、消化器官に負担がかからないよう、食事をより摂生したものに切替えています。状態が悪くなると、入院して絶食や点滴や中心静脈栄養になってしまうので、早めに対応して、医師に相談するようにしています。
食べてるものは、カステラ・プリンなど低脂質でカロリーの取れるもの、白身魚の蒸したもの、inゼリーなどの栄養補助食品、柔らかめに炊いたご飯、おかゆ、柔らかく煮たうどん、卵焼きなどですが、医師に相談しておくと安心です。
カロリーメイトは脂質が高いので駄目です。ご飯のお供にゴマの入ったふりかけもNG。我が家で発見したゴマが入っていないふりかけは、三島食品のかつお、永谷園の大人のふりかけの紅鮭です。

大人のふりかけは海苔が入っているので、大歓迎という訳ではないのですが、同じものばかりでも飽きてしまうので、たまに食べる感じです。個人の判断でお願いします。
腸内環境を整える
腸内環境を整えるため、ヤクルト、ヨーグルトを摂取し、善玉菌を増やすようにしています。砂糖は、一時期オリゴ糖を使ってみましたが、違いがわからなかったので、今はきび砂糖になっています。
調理で気をつけていること
衛生面
食あたりは厳禁なので、手洗い・道具類の洗浄は丁寧にします。私が平気でも、夫が発熱腹痛下痢になる事もあったので、クローン病などで免疫を抑える治療をしている人にとっては、少しの菌でも怖いです。
中途半端な加熱や、常備食的な食品は食あたりの危険があるので避けます。翌日に繰り越しのものや作り置きは、私がおいしく頂いています。
食材・調味料は保管中に傷まないよう、お品を選ぶ時は、多少割高でも少量のもの・個包装のものを選んでいます。開封して時間が経ったものは夫用には使わないようにします。
下ごしらえ
お肉・野菜など、繊維の方向が分かるものは、できるだけ繊維を切るように切ります。
油揚げや薩摩揚げなどは、丁寧に油抜きします。
大根などの下ゆでは、かなり柔らかくなるまで煮ます。崩れる一歩手前までいきたいですが、ゆで時間が長くなると、栄養もゆで汁に出ていってしまうので、蒸すかレンチンが良いです。

加熱について
そば・スパゲッティ・うどんなどを茹でる時は、表記時間よりかなり長く茹でて柔らかくします。歯ごたえは諦めます。ご飯も軟らかめに炊きます。
食材はよく火を通して柔らかくします。焼きすぎると固くなるので、様子を見て調理方法を決めます。レンチンしてから炒めるとか、より柔らかくなるようにします。シャキシャキとかは求めません。
焦げは良くないようなので、焼き色以上に焦がさないようにします。
魚焼きグリル、オーブンレンジのグリル機能、オーブン機能などでノンオイル調理ができます。ヘルシオ的な過熱水蒸気機能はなくても良いような気がします。
また、敷く油は少ない方が良いので、コーティングされた焦げ付かない加工のフライパンを使っています。ホットケーキがうまく焼けなくなる感じになった頃を交換の目安にしています。フライパンはフタがあると、油が少なくても蒸しっぽくなり、焦げ付かないです。
小さい土鍋も便利です。それぞれ別の鍋にしたり、お粥炊いたり、煮物をそのまま食卓に出したり、季節を問わず出番が多いです。
自家製
パンや焼き菓子は、バター控えめレシピで焼いています。市販のパンやマフィン、パウンドケーキよりも脂質が控え目なものが作れるような気がしています。
下記は、クローン病の患者用の食事作りをするにあたって参考にしようと思って何冊か買った本の中でも、よく使った本です。寛解期用のメニューが多いんですが、とりあえず何か一冊お手元にあると役に立つように思います。
日々の生活で注意していること
感染症に気をつける
風邪とかひくと、全身の状態が悪くなるので、気を抜かず、うがい手洗いを励行します。外出時はマスクを着用し、手で食べるものを避ける、できるだけ人混みを避けるなど、コロナ禍と同じ感じの生活です。
同居家族も、感染のもとになるものを持ち込まないように、患者本人と同じように過ごしていると、家族揃って風邪もひかない、食あたりもしない、という健康家族が出来上がります。引きこもり気味になるので、交際関係は控え目になるので、周囲の方に御迷惑をおかけしている気もします。
虫歯にならないようにする
悪化している時期は、虫歯の治療ができないので、日頃から虫歯にならないように注意しています。夫は免疫抑制剤を使用しているので、歯医者さんに行く時はクローン病の主治医に相談しています。
疲れをためない・ケガをしない
疲れ、ストレスはお腹に良くないです。一度悪くなると、復調するのに時間がかかるので、悪くならないように出来るだけ注意しています。ケガもバイ菌が傷口から入り、発熱につながったりするので、できるだけケガしないように、注意して生活しているようです。
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